今月23日まで松屋銀座で開かれている、杉浦康平氏企画『火焔太鼓「二つで一つ」、宇宙の響き…』*1に足を運び、杉浦康平氏の講演会にも参加した。
写真は、以前「宮本卯之助商店・太鼓館*2」に足を運んだ際撮影した火焔太鼓のレプリカだが、右方の太鼓の頂点が銀色の月ではなく金色の太陽になっている。これは誤りで、現在は修正されている。
杉浦氏との出会い
杉浦氏はデザイナーであり、神戸芸術工科大学*3の教授でもある。主にアジアのデザインに精通しており、数多くの興味深い著作を出版なさっている。
私の杉浦氏との出会いは、約10年前に遡る。父親に連れられて、彼の講演会に出席したのがはじまりだ。そのときの主なテーマは「渦巻き」だった。日本の不動明王尊の図像や巴の紋など、さまざまな回転する図形=渦巻きに着目し、なぜこのように回転しているのかという素朴な疑問を出発点とした内容で、数々の図像をスライドで紹介しながら、インドのヨーガにおける脈管と気息の概念や、中国の気功などとの共通点を挙げ、アジア全体に古くから定着している無限の循環の思想を浮き彫りにする、という非常に斬新で鮮やかな講演だった。以来彼が傾倒しているアジア思想やデザインに対する興味が増大し、ヒンドゥー教や仏教に興味を持つようになった。そして現在は印度哲学を専攻しているわけで、まさに彼がインド哲学の世界に私を導いてくれたといえる。彼と出会っていなかったらまったく別の道を歩んでいただろう。それほどに彼の著作や思想は私に影響を与えた。
講演会について
前置きが長くなったが、今回の展覧会は杉浦康平氏の著作『宇宙を叩く』のテーマとして扱われている「火焔太鼓」を扱ったものだ。拝聴者は比較的年輩者が多かったが、父親に連れられて参加している子供の姿もあった。かつての自分を見ているようで感慨深かった。
火焔太鼓は大陸の影響を色濃く受けたデザインではあるが、同じものは日本にしか存在しないという。全長7メートルもの巨大な太鼓が二台。一方の頂点には太陽・もう一方には月があしらわれている。それぞれに龍と鳳凰が描かれ、形状は同じだか異なるデザインである。
今回の講演会も「なぜ二台で一対なのか」「なぜ楽器をここまで装飾するのか」「なぜ太陽と月なのか」「なぜ龍と鳳凰が描かれているのか」など、この太鼓を見たときに誰もが感じる、見たままの素朴な疑問から出発した。火焔太鼓の荘厳で過剰な装飾は、ただ派手にするためにとってつけたものではなく、すべての箇所に意味があり、深遠な思想がこめられているということが明らかにされた。左と右、火と水、陰と陽、仏教の智恵と方便、あるいは聖音オームなど、ここでもアジア全体に浸透している思想がこめられていたことを知り、愕然とした。火焔太鼓には、あらゆる二元性を盛り込むことで宇宙全体が表現されていたのである。現代人には到底考え付けないような、無限の深さと広さが表現されていたのだ。
音楽への応用
今回の講演会を拝聴して、方向、つまり左右や東と西といった要素を音楽的にとらえ、象徴を配置していくと面白いのではないかと考えた。単にパンニングするだけでなく、音域や位相なども考慮することによって、いわば音曼荼羅を作ることができるのではないだろうか。ここまでは今まででも考え付いたことであるが、新鮮だったのは、「関係のねじれ」についてである。月や水を意味する「龍」は、本来的には右方の太鼓に配置されていなければいけないはずが、左方の太鼓に配置されている。そして太陽や火の象徴である「鳳凰」が右方ではなく左方の太鼓に配置されているのである。これは間違いではなく、関係のねじれを作ることで陰の中の陽・陽の中の陰を表しているという。道教の陰陽図を思い浮かべてほしい。西洋の二元論とは根本的に違うのだ。この考え方には度肝を抜かれた。また同時に、様々なインスピレーションが沸き起こった。図形的なイメージであったり、音楽的な理論であったりさまざまだ。私は以前からアジア思想や様々な理論を音楽に取り入れ、その奥にあるものを表現する試みを続けている。近年の私の楽曲は無意味に構築されたわけではなく、一つ一つの音に意味や象徴がマッピングされているのである。たとえばヨーガ学派が説く6つのチャクラを6つの音にアサイン*4したり、四拍子や四つの波形に四季や四諦・四苦などの概念を結びつけたり、『赤と白』*5という曲では赤い血と白い骨によって智恵と方便を表現したが、これまでの楽曲は断絶された二元論を表現していたに過ぎなかった。矛盾を包括することで、一元性や無限性を表現することができることを学んだ。具体的には今回の講演会で得た「関係のねじれ」を取り入れることで、楽曲に無限性を持たせることができるのではないかと考えている。この理論に関する詳細は後日Wiki*6にまとめるつもりだ。
*1:http://www.matsuya.com/ginza/design/0123e_sugiura/index.html
*2:http://www.tctv.ne.jp/members/taikokan/
*4:http://wiki.matsukin.info/index.php?%B2%BB%B3%DA%CE%C5%CB%A1#yf2124cd









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