
先日Twitterで、「Traktor ProとAbleton Live 8の同期して使っています」ということを書いたところ、興味があるという方が多かったので、改めてブログエントリにしてみました。ご参考になりましたら幸いです。
なお、ここで解説している方法はMac OSXでの方法です。
まず、このエントリでご紹介するのは大きく分けて「オーディオ入出力」と「MIDIシンク」の二点です。
オーディオ入出力の具体的なメリット
- Traktorの各デッキ/マスターにLiveのネイティブプラグインやVST Pluginを適用できる。
Traktor ProにはNI謹製の素晴らしいエフェクター類が完備されていますが、それだけでは十分とは言えないDJもいらっしゃると思います。Traktorの出力をLiveの各トラックに立ち上げることで、Live純正のプラグインや無数に存在するVST PluginをCPUの限界が許す限り使えます。Traktorの出力はLiveの各トラックに立ち上がりますので、インサート、センドリターンエフェクトを自由に使えるだけでなく、Liveミキサー内のルーティングも自由です。
現場のモニター環境やフロアの音質はリハーサルでPAと相談のうえ決定されることが理想的ですが、現実的にはリハーサルなしのぶっつけ本番というケースが多々あります。そういった際に出音が気に入らない、欲しい音が出ないといったときに、マスターにEQを差しておけば、DJ自身が現場の音環境を補正することが可能です。また、マスターにSaturatorやHot Tubesなどのアナログシュミレート系プラグインを差しておくことで、単にミックスしただけでは出せないよく馴染んだ音を出力することもできます。マスターには主にマスタリング用のプラグインを差しておくことで、音質面での表現力の向上を期待できます。
MIDIシンクの具体的なメリット
- TraktorとLiveをMIDIシンクすることで、Traktorで流している曲にLiveのセッションビューからクリップ(ループ)を重ねることができる。
Traktorをマスターにすれば、Traktorでかけている曲にLiveがシンクしてくれますし、もちろんその逆も可能です。DJのスタイルに合わせてどちらをマスターにするか決定するといいでしょう。
- Traktorは4デッキが限界だが、Liveにトラックを立ち上げることで無限にデッキを増やすことができる。
私はDJの際13インチのMacBookを使っているので、Traktorを4デッキで表示させると視認性がかなり落ちます。なので、基本的には2デッキで使って、Liveは補助的に使ってSpacesで画面を切り替えながら使っています。こうすることで、Traktorの画面を広く使うことができます。
用意するもの
この例ではTraktor Proを使用しています。Duoや古いバージョンでもTraktor Virtual I/Oが実装されているバージョンでしたら大丈夫だと思います。この例ではAbleton Live8を使用していますが、LiveのバージョンはMIDIに対応しているバージョンでしたらどれでも大丈夫です。詳しくは各ソフトのマニュアルをご覧下さい。SoundFlowerというのはコンピュータ内に仮想のオーディオデバイスを作り、入出力をルーティングするためのツールです。上記リンクから無償でダウンロード出来ます。
Traktor の設定

Traktorを起動したら、Preferencesを開き、MIDI Setupタブ>MIDI Output Devicesの項目から「Traktor Virtual Output」にチェックを入れます。(Traktorをスレーブにしたい場合はTraktor Virtual Inputにチェックを入れる)MIDI Clock Settingsの「Send MIDI Clock」にチェックが入っていることも確認して下さい。

Preferencesを閉じ、メインウインドウの右上にあるClockパネル(メトロノームのアイコン)を表示させ、Clock MasterをINT(内部クロック)にします。こうすると、Traktorの内部クロックにあわせて外部装置(Live)が同期されます。逆にしたい場合は、EXT(外部クロック)のボタンを押して下さい。(逆パターンの説明は省きます)MANまたはAUTOにすると、任意または再生中の曲のBPMがMIDIクロックとして出力されます。TraktorのMIDI設定は以上です。

次にオーディオの設定。PreferenceからAudio Setupタブを開き、Audio Deviceから「SoundFlower(16ch)」を選択します。

Output Routingのタブを開きます。私はTraktorのミキサーを使っているのでMIxing ModeはInternalにしています。デッキの出力をLiveのミキサーにパラアウトしたり、そこから外部ミキサーに出力する場合はExternalにします。
Output Monitor/Output MasterにSoundflowerの各チャンネルを割り当てます。Traktorのオーディオ設定は以上です。
Liveの設定

Liveを立ち上げたら環境設定を開き、MIDI Syncのタブを開きます。Inputの項目にTraktor Virtual Outputがあることを確認し、同期ボタンを押して点灯させます。

メイン画面に戻り、ウィンドウの左上にある外部同期スイッチをオンにします。確認用にメトロノームもオンにしておくとよいでしょう。
LiveのMIDI設定は以上です。

次にオーディオ設定。Liveの環境設定からAudio Setupタブを開きます。オーディオデバイスの項目から、オーディオ入力デバイスにSoundFlower (16ch)、オーディオ出力デバイスに「普段使っているオーディオインターフェイス」を選択します。「入力/出力設定」でステレオ2系統ずつ有効にしておきます。

Liveのセッションビューを開き、ミキサーをこのようにルーティングします。この例では、モニター用チャンネルとマスター用チャンネルをそれぞれMONITOR/MASTERというトラックに立ち上げました。外部DJミキサーを一切使わず、ブース出力などが必要な場合は適宜立ち上げて下さい。(ご使用のオーディオインターフェイスの出力数に依存します)三番目のトラックにはドラムループのサンプルを並べたトラックを立ち上げてあります。必要に応じて、オーディオ/MIDIトラックをマシンパワーが許す限り増やしていくことができます。
一番右のマスタートラックから見ていきましょう。Cue Out / Mater Outをそれぞれオーディオインターフェイスのマスターアウト、ヘッドフォンアウトになるようにルーティングします。Solo/Cueスイッチをキューモードにしてヘッドフォンモニタリングできるようにしておきます。ヘッドフォン出力の音量はCueボリュームノブで調節します。
一番左のMONITERトラックはTraktor側でモニター出力に設定したSoundFlowerの1/2チャンネルを立ち上げ、モニタリングを「In」にして入力音が常時出力に接続されるようにしています。MONITORトラックはミュートしておき、マスターに入力音が出力されないようにしておきます。
左から二番目のMASTERトラックも上記と同様にSoundFlowerの3/4チャンネルを立ち上げ、マスタートラックに接続します。Liveのオーディオ設定は以上です。
実際に同期してみる

画面をTraktorに戻します。先ほどのMIDI Syncパネルの右側にある表示されるMIDI Clockの再生/停止ボタンを押すことで、外部装置にMIDIクロックを送信/停止します。SYNCボタンを押すと、外部装置のMIDIクロックがリセットされて拍の頭を合わせてくれます。いつも通りトラックを再生すると、そのBPMに合わせてMIDIクロックが出力されます。とはいえ拍の頭をこのボタンで合わせるのは至難の業なので、Live側のナッジ機能を使うとよいでしょう。この時点ではあくまでBPMがシンクしている状態です。
その状態でLiveの画面に移ります。すでに同期が開始しており、外部同期ボタンの右にあるインジゲータがMIDIクロックに同期して点滅しているはずです。また、メトロノームをオンにするとTraktorで流している曲のテンポに同期してクリック音がCueアウト(ヘッドフォン)から出力されます。この状態で、BPMインジケータの右にあるナッジボタン(MIDIコントローラに割り当てるとよい)を使って拍の頭をきれいに合わせます。
上記の通りに動作すれば設定は正常に完了しています。お疲れ様でした。もしうまくいかない場合は、上記の手順をもう一度確認してみて下さい。
実用例

ここまでの設定が終わってしまえば、あとは自由にプラグインを立ち上げたり、ループをオーディオトラックに立ち上げたり、VSTiをMIDIトラックに立ち上げてシーケンスを重ねたりと、可能性は無限大に広がります。実際私はどのように使っているかを少しご紹介します。
まず、他のトラックとミキシングする以前のMASTERトラックには各種インサートエフェクトを立ち上げておき、MIDIコントローラでOn/OffやDry/Wet、各種パラメータをいじっています。具体的にはAutopan, Beatrepeat, Reduxなど、Traktorのエフェクターを補完するようなエフェクターを立ち上げています。最後にLimiterを通しておくとクリップしなくて安心。
Send/Returnには、リバーブやディレイといった定番のエフェクターを立ち上げていますが、これらはTraktorに実装されているので、実質的にはあまり使っていません。外部にKaoss Padなどを接続しておいてExternal Audio Effectとして使用しても面白いと思います。なにか面白い使い方があれば教えて下さい。
マスターには、グライコ、マルチバンドコンプ、サチュレータなどを立ち上げて最終的な音質の調整・味付けをしています。これまた最後にLimiterを通しておくと安心です。
当然ですが、プレイ中によく操作するパラメータにはMIDIコントローラをアサインしておきます。LiveとTraktorで共通のMIDIコントローラを使っていても、アサインが競合しなければ問題なく使用できます。むしろアサインを競合させて同時にパラメータを変化させるというトリッキーなこともできます。
TraktorとLiveを同期させることで、普段のDJプレイをよりエキサイティングで音楽的に充実したものにできることは間違いありません。少し設定が煩雑でしたが、その価値はあると思いますのでどうぞお試し下さい。質問・間違い等があればコメント欄かTwitterでお願いします。



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