石井光太先生のトークイベントに行ってきました

Asagaya LoftA

2010年10月31日、私が最も敬愛するノンフィクション作家・石井光太先生(@kotaism)のトークイベントが阿佐ヶ谷 Loft Aにて行われたので行ってきました。

結論から申し上げると、3時間を超えるロングセッションだったため、前回参加した講演会以上にディープなお話が聞けました。新刊の『地を這う祈り』を購入でき、石井先生のサインカードをもらえて大満足でした。

Asagaya LoftA

会場の阿佐ヶ谷Loft Aに足を運んだのは初めてでしたが、飲食しながらトークイベントなどが楽しめるイベントスペースであり、ライブハウスでもあるという素敵なお店でした。

今回のイベントには石井先生の実弟が呼ばれており、肉親の口からでないと絶対に聞けないような石井先生の素顔についてのお話が聞けて良かったです。弟さん曰く、石井氏は父親にそっくりだとか。

一部からの近藤雄生氏との対話の中に出てきたタイの残留日本兵についての話が興味深かった。彼らは、タイとビルマの国境付近の紛争地域で活動する日本人傭兵の斡旋などを行っているらしい。日本に住んでいると、日本人が戦争に参加している認識はほとんどないが、各国の紛争地域で日本人が傭兵として戦闘に参加しているのだなあ。

石井氏と近藤氏の仕事に対する姿勢にあまりに差異があって面白かった。石井氏のストイックな姿勢に頭が下がる思いです。仕事本位のきわめて合理的な思考を持ちながらも、きわめて人間的で情に厚いという二面性—クールかつホットな人間性が彼の魅力の一つではないかと思いました。

また、三部で登場した松岡絵里氏が想像していたより若くて美人だったのに驚いた。著書『してみたい!世界一周』を持っていたので名前だけは存じ上げていましたが。

ミシマ社社長の三島邦弘氏が覆面姿で登場したり何かとプロレスと関連づけるところが印象深い。

石井氏、近藤氏、松岡氏は共に地元が一緒で、「旅」「物書き」というキーワードで再び繋がった関係とのこと。やっぱり世の中狭いですね。

開演前に飲食物をオーダーし、新刊『地を這う祈り』を購入してぺらぺらとめくっていたら見事に食欲がなくなりました。やはり写真が訴えかけてくるインパクトは大きい。思わず目を背けたくなる、吐き気を催してしまうような写真ばかり。今も、本を開けるのに勇気が要ります。写真と共に文章に目を向けると、本当に救いようのないことばかりが書いてある。

こうした「最貧困層の現実」を突きつけられると、非常に複雑な心境になります。「彼らに対して何もしてあげられることがない」という圧倒的な無力感に襲われると共に、「かわいそう」「きもい」といった感情、怖いもの見たさの好奇心、「自分は恵まれている、日本に生まれて良かった」などという安心感と優越感。今の生活水準が世界的に見れば希有であるという事実と自分はなぜここにいるのか?など、いろいろな思いが巡って頭がいっぱいになり、やがてパンクして思考停止に陥る。これは石井氏の処女作である『物乞う仏陀』を読んだときに初めて感じた感覚でした。

石井氏の作品は回を重ねる毎に、より鮮烈に、ディープに、かつダイレクトになっていることは間違いないようです。それは、我々読者が「不感症」になっているため、より刺激の強いものを供給せざるを得ない、ということをおっしゃっていました。たしかに現代のメディアを見渡すと、視覚的で即効性があり単純化された情報が好まれる傾向があります。表現者としては(商業ベースである以上)ユーザーが求めるものを作り続けなくてはならない。よくマスコミ批判が話題になるが、一方的に意味づけされた「わかりやすい報道」を求めているのはユーザー自身であるという側面も否定できない。こうした傾向が進む先はどういった未来なのだろうか?

「報道写真にどのようなキャプションがついているかで意味が全く違う」という石井氏の言葉が象徴的だったが、常に中立的であり、常に真実を伝えるジャーナリズムはありえない。ソーシャルメディアの普及で誰もが発信者になれる時代ならなおさら。情報を漫然と受け入れていては流される。発信者の立場を明確に把握しつつ、自分はどのような立場でそれを受容するのか、を常に再認識していかないといけませんね。

今回はこのようなことをひしひしと考えさせられ、頭の中がぐるぐるになりました。頭の中をぐるぐるにしてみたいという方は、ぜひ石井先生の著書を読んでみてください。

石井光太 − 旅の物語、物語の旅 −

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