自費出版の『謎漫画作品集』を当時の同僚に見せてもらって衝撃を受けて以来、すっかりファンになってしまった漫画家・大橋裕之先生。このブログでも何回か紹介させていただきました。その大橋裕之先生が月刊「モーニング・ツー」に連載中の「シティライツ」という作品が遂に単行本に!早速Amazonで購入。
結論から言うと、何度読んでも感動できる、素晴らしい作品です。
一回読んだ感想としては、今までの大橋作品から見ると、だいぶライトというか、読みやすいというか、大衆向けな印象。月刊誌への連載だから仕方ないのかな?とコアなファンとしては若干物足りなさを感じたというのが正直なところ。コマ割も前半は規則的になっていて、ミニマルテクノのようなリズム感。連載が進んで行くにつれて試行錯誤を重ねている様子も伺えました。
二回三回と繰り返し読んでいるうちに、上記の表面的なことだけでなく、魅力的な登場人物の人間味がじわじわと入ってくる感覚を覚えました。帯に書いてある「『呑気と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする』という漱石の言葉が想起させられる」という又吉直樹氏のコメントが言い得て妙。
繰り返し読んでいると、一回目に読んだときの直感「大衆向けになったなあ」という印象が払拭され、間口が広がりつつも、従来の大橋作品に見られるディープさというのが、しっかりと詰め込まれていることに気づきます。「謎漫画作品集」の頃は、正直読む人間を選ぶというか、ダメな人はダメだと思うんですが、「シティライツ」はかなり誰でも入りやすい。しかし大橋流の洗礼をバッチリ受けることができる。むしろそういったディープさを前面に出さないことによって、何回も読みたくなる「スルメ効果」を醸し出しているのではないか。と思います。読む度に新しい発見がある。
ここで多くを語るよりも、実際に読んでいただくのが手っ取り早いので、特に気に入っているエピソードやキャラクターを紹介します。
『シティライツ』のエピソードは基本的に一話完結ですが、たまに以前の話の続きが出てきたりする。そういったエピソードに#3「アッパくん」#14「ムイマトンパ」があります。漫画家志望の主人公・吉田とおるが描く「アッパくん」というキャラを妙に気に入ってしまいました。あまりに気に入って自分でも描いてみるのですが、吉田くん(大橋先生)のようにかわいく描けない。シンプルな線だからこそ難しい。単に私に絵心がないだけというのもありますが。

アッパくんを描いてみた。実物はもっとかわいいよ。
#11「ともだち」も秀逸。ミュージシャンを志す原くんと、隣人のおじさん・しげるさんの友情物語。路上ライブが緊張でうまくできなかった原くんに対してしげるさんが、「原ちゃんの歌なんて全然たいしたことないよ!!だからこそズバッと思い切り歌えばいいんだよ!!」と叱咤激励するシーン。自分も音楽をやっている身なので、まるで自分に言われたかのように胸が熱くなりました。そうだ、自分の音楽なんて全然たいしたことないのだから、ズバッと思い切りやればいいのだ!と勇気がわいてきました。音楽に限らず、自分が取り組んでいること全てにいえる気がしました。自分なんて全然たいしたことない人間だ…。と落ち込むこともありますが、「だからこそズバッとやればいいのだ!」と考え方が一歩前進しました。
このエピソードにでてくる「ツバサ」というロボットも非常に人間味があっていいんだよなあ。表情もないし、しゃべることもないのだけど、物凄く人間味がある。病床に伏せるしげるさんの傍らに座っているツバサの姿は、しげるさんのことを物凄く心配して看病しているように見えて愛おしい。
上記のエピソード以外にも、非常に含蓄に富んだエピソード、素朴なタッチで描かれた魅力的な登場人物がたくさん出てきます。ぜひ、一読されることをお勧めします。そして、一読したら二読三読したくなること間違いなしです。
大橋裕之 ミラクル告知
大橋裕之 (osirioisosiru) on Twitter






















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